『万葉集』中、卯の花をよむ歌 
 

→ウツギ


長歌

 ・・・
 うの花の さく月たてば めづらしく 鳴くほととぎす
 あやめぐさ 珠ぬくまでに ひる
(昼)(暮)らし よ(夜)わた(渡)しき(聞)けど
 ・・・
   反歌
 うの花の ともにしきけば ほととぎす いやめづらしも 名のりな
(鳴)くなへ
 ほととぎす いとねたけくは 橘の はなちるときに きなきとよむる
     (18/4089;4091;4092,大伴家持)

 鶯の 生卵
(かひご)の中に 霍公鳥 独り生まれて ・・・
 うの花の 開きたる野辺ゆ 飛び翻
(かけ)り 来鳴き響(とよ)もし
 橘の 花を居散らし 終日
(ひねもす)に 喧(な)けど聞きよし・・・
     
(9/1755,高橋虫麻呂「霍公鳥を詠む」)

 ・・・ 霍公鳥 来鳴かむ月に いつしかも はや(早)くなりなむ
 うの花の にほへる山を よそのみも ふりさけ見つつ ・・・
     
(17/3978,大伴家持)

 ふじなみ
(藤波)は さきてち(散)りにき うのはなは いま(今)そさか(盛)りと
 あしひきの やま
(山)にも野にも ほととぎす な(鳴)きしとよ(響)めば ・・・
     
(17/3993,大伴池主)

 ・・・ 見わたせば うのばなやまの ほととぎす ね
(音)のみしな(鳴)かゆ ・・・
     
(17/4008,大伴池主)

 ・・・ うの花の さく月たちば めづらしく 鳴くほととぎす ・・・
   反歌
 うの花の ともにしな
(鳴)けば ほととぎす いやめづらしも なの(名告)りな(鳴)くなへ
     
(18/4089;4091, 大伴家持)
 


短歌

 時じくの 玉をそぬ(貫)ける うの花の 五月を待たば 久しかるべみ
     
(10/1975,読人知らず。別訓に「時ならず」)
 うの花の さくつき(月)(立)ちぬ ほととぎす
   き
(来)(鳴)きとよ(響)めよ ふふ(含)みたりとも (18/4066,大伴家持)
 うの花も 未だ開かねば 霍公鳥(ほととぎす) 佐保の山辺に 来鳴き響もす (8/1477,大伴家持)
 霍公鳥 来鳴き響もす うの花の 共にや来しと 問はましものを
(8/1472,石上鰹魚)
 うの花の 開くとは無しに 有る人に 恋ひや渡らむ 独念
(かたもひ)にして
     
(10/1989,読人知らず)

 あさ霧の 八重山越えて 霍公鳥 うの花邊から 鳴きて越え来ぬ
(10/1945,読人知らず)
 五月山 うの花月夜 霍公鳥 聞けども飽かず また鳴かぬかも
(10/1953,読人知らず)
 うの花の 咲き落
(ち)る岳(おか)ゆ ほととぎす
     鳴きてさ渡る きみ
(君)は聞きつや (10/1976,読人知らず)
 佐伯山 うの花もてる かな
(愛)しきが 手をし取りてば 花は散るとも
      (7/1259,読人知らず。別訓に「うの花もちし あはれ我 子をし取りては」)
 霍公鳥 鳴く峯
(を)の上の うの花の 厭(う)き事有れや 君が来まさぬ (8/1501,小治田広耳)
 鶯の 往来
(かよ)ふ垣根の うの花に 厭き事有れや 君が来まさぬ (10/1988,読人知らず)

 春去れば うの花ぐたし 吾が越えし 妹が垣間は 荒れにけるかも
(10/1899,読人知らず)
 うの花を 腐
(くた)す霖雨(ながめ)の 始水(みづはな)
   縁る木積
(こづみ)なす よ(縁)らむ児もがも
     
(19/4217,大伴家持。別訓に「始水(はつみず)逝き」)
 かくばかり 雨の零
(ふ)らくに 霍公鳥 うの花山に 猶か鳴くらむ (10/1963,読人知らず)

 うの花の 散らまく惜しみ 霍公鳥 野に出山に入り 来鳴き響す
(10/1957,読人知らず)
 皆人の 待ちにしうの花 落
(ち)りぬとも なく霍公鳥 吾忘れめや (8/1482,大伴清縄)
 うの花の 過ぎば惜しみか 霍公鳥 雨間も置かず 此間
(こ)ゆ喧(な)き渡る (8/1491,大伴家持)
 霍公鳥 鳴く音聞くや うの花の 開き落
(ち)る岳(をか)に 田葛(くず)引くをとめ
     
(10/1942,読人知らず。別訓に「田草(くさ)引くをとめ」)
 



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